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フリーランスであるあなたは、依頼者が結んでいる様々な契約書があると思います。
その全ての契約書面の根拠となっている法律が、民法というものとなります。
とはいうものの、いきなり民法はどんなものかな?と六法やインターネットで民法の条文を見ただけで、法律の勉強経験のない方であれば、うんざりしてしまうことでしょう。
法律は、全て第○○条と条文数が付けられて構成されていますが、日本の民法は条文数だけでも、1,044条も存在しており、いきなり読んでも迷子になってしまう可能性が非常に高い、ややこしい法律になっています。
また民法は「総則」「物権法」「債権法」「親族法」「相続法」の5編にわかれていますが、フリーランスの方が仕事の契約関係で直接民法と関わることになるのは、債権の部分であり民法では第三編となっています。
まず、2020年4月1日に施行される経緯を見ていくことにしましょう。
今回の改正は3年前の2017年5月に国会で成立した、「民法の一部を改正する法律」が施行されることによって、変化するものとなります。
今回は改正部分の多くが第三編の債権法に割かれていますので、債権改正とも国の方では呼ばれているようです。
法務省のホームページにも債権改正となっており、専門家のための新旧の比較などが掲載されていますので、興味がある方は一度ご覧になってみてもいいでしょう。
驚くべきことに、民法の第三編の債権は民法が日本で制定された1896年から、2020年まで124年間も実質的な改正がされていないということがありました。
法律と現実に124年間ものタイムラグがあれば、時代の変化があるにも関わらず、全く変化しない法律が時代の流れとかけ離れたことを決めている事実が実際に多くあったわけです。
今回の改正で、完全に2020年代に最適な内容になったとはいえないでしょうが、少なくとも現代の方が感じる違和感は少なくなってきているのではないかと思われます。
以下で、フリーランスの方が覚えておきたい改正について解説していきます。
今回の民法改正で、フリーランスの方が最も影響を受けると思われるのが、売買契約に関するルールの変更になるでしょう。
契約内容と実際の結果に不適合が見つかった場合に、民法で定められている契約不適合の権利には「損害賠償」「解除」※1「追完請求」※2「代金減額」の4つが存在していますので、契約不適合の4つの権利について、これまでの民法と改正後の民法について、比較表を作成してみましたので、確認してみてください。
※1追完請求
追完請求とは、契約が不適合である状態が判明した場合に、買主が売主に対して、目的物を修理したり、代替品の交換や足りない部分の引き渡しを請求することをいいます。
簡単には、契約の足りないものを相手に要求する権利と覚えておくとわかりやすいでしょう。
フリーランスの方が注意することは、追完請求されないように、契約書を確認して契約書通りのサービス・商品を納品することを心がけてください。
※2代金減額
代金減額はその名前の通り、契約が不適合の場合に、サービス・商品代金を正規料金から減額請求できることを意味しています。
フリーランスの方が注意することとしては、代金減額請求をされないように、契約通りの仕事をすることが重要となってくるということです。
買主ができる権利 | 買主に責任あり | 両者に責任あり | 売主に責任あり |
損害賠償 | 賠償請求不可 | 賠償請求不可 | 賠償請求可能 |
解除 | 解除不可 | 解除不可 | 解除可能 |
追完請求 | 追完請求不可 | 追完請求不可 | 追完請求不可 |
代金減額 | 代金減額不可 | 代金減額不可 | 代金減額不可 |
買主ができる権利 | 買主に責任あり | 両者に責任あり | 売主に責任あり |
損害賠償 | 賠償請求不可 | 賠償請求不可 | 賠償請求可能 |
解除 | 解除不可 | 解除可能 | 賠償請求可能 |
追完請求 | 追完請求不可 | 追完請求可能 | 追完請求可能 |
代金減額 | 代金減額不可 | 代金減額可能 | 代金減額可能 |
大きく変化しているのが青色の部分です。
買主に責任がある場合のルールはこれまで通りですが、契約当事者両者に責任がある場合と売主に責任がある場合は、改正により、「解除」「追完請求」「代金減額」の3つの権利が可能になったことが大きな変化です。
フリーランスの方の多くが契約当事者になる場合には売主でしょうから、代金減額請求と追完請求が可能になったことは、絶対に覚えておくようにしましょう。
改正前は、契約を解除するためには、売主に契約を解除されるための理由があることが必要となっていました。
ただその理由が自然災害のような、予想のできない場合には理由とされなかったことが、問題となっていたのです。
ですから、改正後では、自然災害のような予想のできない事態であったとしても、それを理由として買主側の理由で、契約解除をできるようになっています。
改正により、契約相手の信頼性が低くなったと感じた場合には解除できるようになったことで、信頼できる相手と契約を結べるようになりました。
特にフリーランスでは売上は重要ですから、契約解除要件の改正は仕事の契約面のリスクが減ることに繋がってくるはずです。
今回は、フリーランスの方に影響がある可能性の高い、2020年4月1日からの民法改正(所謂・債権改正)について、民法の存在をはじめとして解説してきました。
フリーランスで活動していくには、取引相手との契約書面は、あなた自身を防衛するために非常に大切な書類になります。
契約書面はリスク回避のためにも、あなた自身を有利にするためにも、フリーランスで仕事する場合には作成は必須なものとなりますので、今回の民法改正で施行される債権改正についても理解して、契約書面のおかしな部分についても多少は指摘できるようにしておくことが、あなたにとっても有利なことになることを覚えておいてください。