会社員時代であれば、取引先との商談がまとまったとしても、対象となるのは商談相手と自分の勤務している会社であって、あなた自身が商談の当事者という意識は低かったのではないかと思います。
ですが、フリーランスになれば、契約の当事者はあなた自身ということになります。
ここでは、フリーランスだからこそ契約書の重要性を理解していただくために、契約に関して解説します。
目次
あなたはフリーランスですので、仕事を依頼する場合も依頼される場合の両方がありえると思います。
どちらにしても契約の当事者が誰かということがはっきりしていなくては、報酬の請求であってり、サービス・商品の納品の際に、間違っておこなったためにトラブルになってしまう可能性も内包しているわけです。
あなたが仕事依頼を受けたのであれば、仕事の依頼者は誰であるかをはっきりと理解しておくようにしましょう。
また、仕事を依頼する場合も、誰に仕事を依頼したのかを、はっきりと理解しておかなければいけません。
フリーランスとして独立開業した以上は、毎回仕事を誰としているかを、管理しておくことが無用のトラブルを防ぐために必要なことであると覚えておきましょう。
商品を販売する物販の場合には、商品の注文をうけて、問題のない商品の発送が完了すれば、基本的にアフターフォローがなければ問題なく仕事は終了したこととなります。
ですが、サービスを提供している場合には、仕事の内容をお互いに把握しておかなければ、後になって「こんなはずではない!!」とトラブルになる可能性もあります。
例として、WEBサイト制作の仕事を受けたと仮定してみましょう。
WEBサイト制作の場合には、サイトデザイン作成・独自ドメイン取得・サイトのSSL化・内部のコンテンツ作成・日々の更新作業などのように、制作といってもお客様によって違いがあり、あなたがどこからどこまでを仕事として請け負うことが可能なのかをはっきりしていなければいけません。
もし、仕事の範囲をあいまいにして制作をスタートしてしまうと、あなた自身はデザイン・独自ドメイン・SSL化・トップページの作成といった、最低限公開に必要なものが完成した時点で、仕事は完了したと考えているにもかかわらず、依頼者は、コンテンツ作成や日々の更新も含めて料金に含まれていると思っていたなど、認知にズレが出てしまうことがあります。
上記のような、言った言わないを後から防ぐためには、契約書を作成しておき、その内容に仕事の範囲を決めておき、追加作業が発生する場合には追加料金を請求しますというように、誰にでも理解できるように、明確化しておくことが重要です。
またWEBサイト制作であれば、修正回数を5回までというように、回数上限を設定しておき、依頼者の不当な要求にブレーキをかける条件をつけておくこともいいでしょう。
仕事内容と範囲について合意しただけで、安心することは危険といえます。
まだ、重要な事項である報酬については、決められていないからです。
報酬は仕事全体の支払い金額も重要ですが、数十万円から数百万円といった高額な報酬の仕事の場合には、報酬の支払いタイミングも決めておくべき事項となってきます。
高額な場合は、一般的には報酬の半額を着手金として支払っていただき、仕事完了時点で成功報酬として、残りの半額を支払っていただくスタイルが一般的となっているでしょう。
また、仕事を受けた後で、相手側の事情で依頼を途中でキャンセルされた場合には、着手金の返還は仕事に取り掛かる事実について発生するものですから問題ないとしても、成功報酬の残り半分の取り扱いをどのようにするかについても、しっかりと決めておくべきでしょう。
途中まで仕事が進捗している場合には、キャンセル料として成功報酬部分をいただくのか、キャンセルした場合には、進捗状況に関わらず成功報酬部分はいただかないとするのかのように、あなたや顧客によって報酬に対する考え方には違いがあります。
ですから、前項の仕事の内容も含めて、報酬や支払い時期・条件についても、依頼に取り掛かる前に詳細を決めておき、契約書に盛り込んでおくことで、問題が発生した際のトラブルを小さくすることが可能となるでしょう。
特に、お金の問題は揉め始めると、トコトンまで揉める原因となりますので、神経質なくらいに相手に確認して合意内容を契約書に盛り込んでおくことで、リスク回避を図るようにしてください。
イラストレーター・ライター・陶芸家・作詞家・作曲家など、クリエイター分野でフリーランスとして活動する場合には、要注意な権利が著作権というものになります。
著作権はその物を作成した人が、作成した時点で発生するものですから、イラストでも文章でも陶芸作品でも音楽、あなたが作成したのであれば法律的にはあなたに著作権があることとなります。
ただし、相手から依頼を受けて作成した場合で、契約で作品の著作権をあなたが放棄して、相手に帰属することとした場合には、完成後に作品をあなたが自由に使用することができないこととなります。
笑えない事例として、歌手が自分の曲を歌うのにJASRAC(一般社団法人日本音楽著作権協会 )から使用料を請求されたというものがあります。
上記の歌手のような事態を防ぐためには、仕事を受ける際に、作品の権利を誰に帰属させるのかを決めておくようにしましょう。
日本の法律では、契約は口約束でも問題ないとされています。
単純に両者に契約の意思があって、契約を結ぶことを承諾した場合には、書面の契約書がなくても、契約は成立するという理論で、法律用語では諾成契約(だくせいけいやく)と呼ばれています。
ただ、口約束の場合にはトラブルが起こった際に、本当に両者が契約をしていたかどうかを第三者に証明することが、非常に困難となりますので、結果的に泣き寝入りをせざるを得ないといった場合も、よく見受けられます。
時間と手間とスキルを駆使して作品を完成させたものの、タダ働きで終わってしまうと、フリーランスの場合には生活基盤が崩れてしまう危険もありますので、このようなリスクを排除するためにも、契約書は必要だということなのです。
既に、依頼を受けている仕事のなかには、契約書を交わさないでおこなっているものもあるかもしれません。
このような場合には、今から契約書を作成することは難しいでしょうから、相手先との交渉の過程が第三者に証明できるものを、全て残しておくことがポイントとなります。
残すものはメールでもLINEでも、何でも問題はありません。
トラブルになった際に、それを見れば実際に仕事の依頼者と受注者になっていることが理解できれば、なかったことにはされないのでリスクを回避することが可能となります。
しかし、全ての証拠が残っていない場合もあるでしょうから、やはり契約書を作成するほうが安心だといえるのです。
今回は契約書を作成する際に、入れておくとトラブルやリスクが回避できる内容から、契約書を作成する必要性について、解説してきました。
ビジネスではやはり契約社会ですので、契約書の存在は絶大なものとなります。
フリーランスで活動する以上は、あなた自身を守るツールであると考えて、契約書は些細な仕事であっても作成する癖をつけるようにしてください。