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てくてくフリーランス優美(第4話)

てくてくフリーランス優美

 フリーランスでWEBデザイナーをしている私、優美には家族がいる。

「ピケ―、ピケ。朝ごはんだよ」

 ピケは、茶色と白と黒が綺麗に分かれた、三毛猫の雌だ。

 もともと家族で飼っていたけど、父親が退職前の最後の転勤で大阪に引っ越すことになり、心配した母とまだ高校生の末の妹は、そちらへついていくことになった。
 大学生の真ん中の妹は元々、大阪の大学に通っていたから、今ではそちらで家族みんなで暮らしている。

 でも住むことになった社宅はペット禁止。私はそのころ、ちょうどフリーランスとして生きていく気持ちを固めたところだったから、ピケを引き取った。

 みゃんみゃん、と鳴きながらご飯を食べるピケに、ニヤニヤしながら写真を撮る。

 最初のころは、こうやってご飯も食べてくれなかった。

(私は実家で暮らしてたけど……世話なんて、全然しなかったもんねぇ)

 ピケを一番可愛がっていたのは両親で、だからこそ、ピケは急に私と二人で暮らすことになって、とても驚いたんだろう。
 最初の2ヶ月くらい、私は触らせてさえもらえず、つねに警戒されていた。いつも家にいるけど近づいてこなかった存在、そんなのが、突然世話をしてくるんだから、ピケだって驚いたと思う。

 それが少しずつ心を許してくれて……今では作業の合間の時間を癒してくれる、大事な存在だ。

「あっ、先輩からメール来てる……えーと」

 ピケがご飯を食べ終えて、フローリングの床をストスト歩いていく音がする。

 先輩とは、かつて勤めていたWEB会社の先輩で、篠田さんという男性だ。丸っこい顔の食いしん坊な人だったのに、ダイエットに成功してすれ違っても分からないほど激変していた。
 そのせいで驚いた私と、気が付かなくて嬉しかった篠田先輩は、最近になって連絡を取り合うようになっていた。

 なんと、新しく仕事をちょこちょこ回してくれるようになったのだ!

(人の縁って、やっぱり大事よね!)

 私が頷きながらパソコンに向かって、メールの内容と、手元のスケジュール帳の予定を合わせていると、足首にピケがくるんとしがみついてくる。
 遊んで、と催促しているらしい。

「ちょっと待ってー、えーっとねー」

 メール内容を必死になって読み返しながら、ピケのために足を揺らす。ピケはそれを追いかけて、抱き着いたり、飛びついたり、抱え込んで後ろ足でキックしたり、大騒ぎだ。

「ピケったらもー、けりけり止めてー」

 そんなことを言いながら、メールを返信する。

「えっと、じゃあ次は、こっちの仕上げを済ませて……」

 今日の予定を組み上げていた、その時だ。
 篠田先輩からすぐに、メールが届いた。

「あれ? ……あっ」

 返信されたメールにはたった一言。

『俺はけりけりしてないよ』

 と、書いてある。慌てて、先ほど送ったメールの内容を確認すると、一番最後に『けりけりしないで』と突然打ち込んであった。先輩から来たメールの件名が猫の顔文字になっているし、ピケにかまっていて『けりけりしないで』と打ち込んだのが、完璧にバレている。

「は、恥ずかしい……」

 思いもよらぬ失敗をしながら、私の1日は始まるのだった。

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