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てくてくフリーランス優美(第1話)

てくてくフリーランス優美

 にゃあ。足元で、猫のピケが遊んでほしそうに鳴いた。

「昨日までで納品は完了したし、メールも送ったし……今日はお休みにしようかな!」

 私、優美はフリーランス1年目のWEBデザイナーだ。

 アパレル企業に就職後、思うところあってWEBデザイナーを目指して転職、そして独立して今はフリーランスとして自宅兼事務所を構えている。

 猫のピケは唯一の同居人、一緒に遊ぼうとこちらを見上げるアーモンド形の目と、ふっくらとした体に手を延ばそうとした時だ。

ポーン!

 間の抜けた音を立てて、スマホの画面にメールの着信を知らせる音が響いた。

 この音は、すでに取引をしている企業から連絡が着たときだけ、鳴るようにしている。

「うわぁ……新しい案件だ。休みにしようかなー、なんて思ったとこだったのに」

 そう、フリーランスになって気づいたけど、休みがない。

 会社だったら休日が決まっていたし、取引先が休みだと急ぎの案件でも進められないことが多かった。でも今は自分一人だから、休むかどうかは自分で決めるしかない。

「どうする? お世話になってるとこだし、受けた方がいいよね? でも休みたい気もするし……」

 悩みながらも、私はメールを開いた。

『お世話になっております。新しい案件を急ぎでお願いしたいので、連絡してもいいですか?』

 簡素な文体から、切羽詰まっている感が伝わってくる。

「話だけお聞きしよう……」

 そう思って、Skypeを使って連絡を取った。

「もしもし、おはようございます」
『あ、どうも、優美さん。すみません朝早くから、急ぎの依頼、特急料金でお願いしたいんですけど……あ、今、詳細メールしました』
「分かりました、見積もり送りますね」

 素早く、特急料金向けに作っておいた見積もりを引っ張り出して、受けた内容に応じて細かなところを調整しながら完成形にしていく。
 足元でいじけたピケがぐるぐる鳴いてるけど、しかたがない。

 だって、特急料金なんだもの。

「送りました、確認お願いします」
『はーい……今日って休みとかじゃないですか? 大丈夫ですか?』
「全然! いいですよー、構いません」
『それならいいですけど……ほら、最近言うじゃないですか、ワークライフバランスって』

 あははは、と、私は笑った。

 自分一人しかいないので、ワークライフバランスを若干無視して働かないとならないこともある。普通の会社ならここで他の人と協力しあうだろうけど、そうじゃないことだってたくさんあるんだと、独立して初めて気が付いた。

『OKです。じゃあ、この見積もりで、お願いします』
「はい、よろしくお願いいたします」

 そのまま細かいところを詰めながら、話し合いを進める。

 フリーランスは、忙しい。
 忙しいけど、でも私は楽しいと感じている。

 フリーランスに、休みはない。
 でも休もうと思えば休めるし、自分でそこも決めなくちゃならない。

 だから、今、私は。

 フリーランスが、楽しいんだ。

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